ミスは無くならない、しかし減らすことはできる
模試の結果が返ってくるたびに、「ミス」で大量に失点していることにお悩みのご家庭はとても多いと思います。国語で10点、算数で10点・・・と積み上がっていけば、4教科では結構大きな点数になります。その点数があるかないかで偏差値が大きく変わります。
この、ミスに対しての対処法は、以前に塾の保護者会などでお話をするときにも人気のテーマでしたから、ほとんどのご家庭で困っておいでなのではないかと思います。
算数のミスについては、比較的対処が簡単だと思います。ご家庭からご質問をいただくときにいつもお伝えするのは、毎日計算問題を数問ずつ行うことです。ある程度時間はかかりますが、計算の練習をすればするほど、計算ミスが確実に減っていきます。
では、国語のミスは?というと、これが非常に難しいです。
国語と算数の違いは、ミスの原因が幾つかの点にしかないのか、幅広く広がっているのかの違いにあります。算数のミスは、計算ミスが大きな割合を占め、それ以外は文章題での問題の取り違えになります。計算の練習をすれば計算ミスが減り、計算の速度も上がるので、文章題にも余裕が生まれて読み間違いをしにくくなります。
それに対して、国語のミスは、大きく分けて、表記に関するもの、問題文の取り違えによるもの、素材文の読み間違いによるもの、があります。
表記に関するものは、抜き出し問題の写し間違い、記述問題の漢字の間違い、内容の正誤をABで書くのに○×で書く(南山女子部でよく出題されます)、ごく稀に選択肢の書き間違いがあります。問題文の取り違えについては、抜き出しと記述の混同、指定語句を使用していない、問題の要求と文末表記が一致していない、誤答を選ぶべきところを正答を選ぶ、一文の抜き出しを部分で抜き出す、段落での抜き出しなのに途中から抜き出す、などがあります。素材文の読み間違いは、助詞・助動詞の読み飛ばし、読み間違い、文章の最後での逆転、言葉の意味の取り違え、などがあります。文章の最後での逆転というのは、たとえば、
設問:蒼とはどのような色ですか?
素材文:蒼とは、日本語の青色のことではない。古来の中国では、蒼とは斑色、あるいは灰色のことであった。だから、蒼き狼は、青色の狼ではなく、灰色の狼という意味なのだ。
解答:青色。(ではない。を読み飛ばしたため)
というようなものです。
これだけ多岐にわたる原因があるのだから、ミスに対する対処が他の科目に比べて格段に難しいことはご理解いただけると思います。では、それに対してどうすれば良いのか。
冒頭にもある通り、ミスは無くなりません。しかし、減らすことはできます。重要なのは、ミスをしてきたお子さんに対して、ミスを減らすアプローチができているかどうか、です。
良くないアプローチの筆頭は、「問題をよく読みなさい」、「落ち着いてやりなさい」などの、精神的なアプローチです。もちろん、中には受験や試験に対する覚悟が足らないお子さんもいらっしゃいます。そういったお子さんには、勉強に向き合う姿勢や、志望校への意識づけなどの精神的なアプローチがとても大切です。しかし、5年生の半ばくらいになると、どのお子さんも真剣に勉強し、模試に挑んでいることがほとんどです。
私が指導するときに生徒がミスをすると、「次はどうする?」と聞きます。「ミスをしないように頑張ります」、「もっと問題文をよく読みます」などの返答をするお子さんが結構いらっしゃいますが、私はそれでは納得しません。その子が真剣にやっていることは分かっているからです。既に一生懸命やっているのに、次も一生懸命やります、と言うのは何も言っていないのと同じです。
私は、ミスを減らすためには、それぞれのミスの原因に対して、それを防ぐ方策を考えることだと思います。この文章の中盤の国語のミスについて述べた部分が、細かすぎる、神経質だ、と思われた方も多いと思います。ただ、私はこういったミスをどうすれば減らせるのか、という視点で生徒と向き合ってきました。その積み重ねが、ミスに対して細かすぎる姿勢につながっているのだと思います。
全ての対処法をここに書くことはあまりに長くなるために出来ませんが、一番最初の、抜き出しの写し間違いについてのアプローチをご紹介します。ミスに対してどのように向き合えばよいのか、というヒントにしていただければと思います。
抜き出しの写し間違いの対処法
①抜き出し問題は、必ず素材文の該当部分に「」を付け、その文字数を右上に書く。
例:蒼き狼は、⑬「青色の狼ではなく、灰色の狼」という意味なのだ。
こうすることによって、「青色の狼→青い狼」とした場合や、「ではなく→でなく」とした場合、「、」を忘れた場合などには、文字数が異なってくるので、解答欄を見ればミスに気がつけます。解答欄の文字数は5文字刻みになっているので、この場合、写し終えたあとに2マス空いていなければなりません。これが3マスになっていたり、1マスになっていれば、自分がどこかで写し間違えたのだと分かります。
②たくさんの文章を書く練習をする。
例:記述問題を解いてみる、選択問題の解答を自分で書いてみる。
抜き出しの写し間違いの発生頻度自体はあまりお子さんによって違いはありません。差が出るのは、自分の写し間違いに気がつけるかどうか、です。写し間違いをしている場合、日本語としておかしくなっていることが多く見られます。たとえば、「青色の狼はなく、灰色の狼」といった間違いの場合、明らかに文意がおかしくなります。このときに、「ん?」となるかどうかは、普段から正しい文章を読み、書いているかどうかに大きく関わります。
記述問題を解くことは、東海以外の中学を受験する方にも効果のある学習法です。