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-出題傾向は幅広く
第一志望でなくても対策は必須-
出題傾向は、語句分野も含めてさまざま。この合否(結果)が東海・滝への受験に大きく影響。
1.出題傾向
名古屋中学の入試問題は、例年、文章題2題と漢字・語句分野2題、思考力を求める問題1題となっています。文章題は、説明文・物語文がそれぞれ出題され、語句分野は文の成分・空欄補充・部首・敬語・慣用句・四字熟語など、中学受験で学ぶすべての分野から1~2分野が出題されます。思考力を求める問題は、いわゆる論理パズルのような問題ですが、年度によっては、文章の読み取りの問題が出ることもあります。
文章題については、問題の内容は標準的です。選択・抜き出し・記述(1問、60字程度)がバランスよく出題されます。選択問題の難易度は標準的ですが、抜き出し問題は文章を完成させるものが多いです。語句は、学習するすべての範囲からの出題で、ほかの中学のように偏りがありません。また、出題のされ方は、たとえば四字熟語について大問を1つ設定し、その中で5個前後の小問を出題するという形式です。出題される問題の難易度は標準的ですが、どの分野が出題されるか分からないため、満遍なく学習を進めておく必要があります。
漢字の問題は例年5問程度、文章中から出題されます。難易度は標準的で、書き3問、読み2問です。送り仮名は必要ありません。
2.合格者平均点
合格者最低点は例年160点~180点(国算100、社理50の300点満点)の間に収まります。スカラー合格は210点前後です。スカラー合格は受験生の上位15%とされていますが、人数では200人程度となります。この中学は、日程が東海・滝の一週間前であるため、東海地区の男子受験生がほとんど全員受験します。上位15%の200人は、ほぼ東海・滝に合格し、実際にスカラーで入学する人数は5名前後になります。また、この中学は入試結果の点数を送付してくれます。
3.合格に必要な力
名古屋中学の合格に必要な力は、文章題の標準的な力と、漢字・語句の蓄積です。1でも述べた通り、この中学の語句の出題は分野が偏っていませんが、その年に出される問題は偏っています。どういうことかというと、たとえば10年というスパンで見れば、どの分野からも出題されますが、その年に出題されるのはせいぜい2つの分野に限られます。そして、その分野に多いときには5問以上の問題が作成されるため、配点としては20点近くになる(1問3点)と考えられます。語句の知識に一か所でも穴があると、その分野が出題されたときに一気に10点以上を失うことになります。これはできるだけ避けたいので、語句を全分野、広く浅く学習するようにしてください。
文章題は難しい出題はほとんどありません。ただ、選択問題、特に物語文のものが、少し答えにくいことがあります。説明文でも、空欄補充の選択問題などでは、文章の全体の内容を理解した上でなければ正解できない問題があります。記述問題は1問しか出題されません。どちらかというと、素材文の内容をまとめるものであることが多いです。
4.その他
ここがいちばん重要なポイントなのですが、名古屋中学の入試結果は、東海・滝の入試に大きく影響します。よくあるパターンは次の2つです。
①東海・滝の合格に必要な偏差値を持っている受験生が、名古屋でスカラー合格にならない。
②東海・滝の合格に必要な偏差値を持っている受験生が、名古屋で不合格になる。
①については、東海の合格が当然視される偏差値を持っていれば、当然スカラー合格を意識して名古屋を受験することになります。ところが、上でも述べた通り、スカラー合格は受験生の上位200人程度です。東海の合格者数は400人近くですから、半数はスカラー合格ではないということになります。しかし、自分が実際にスカラー合格でないという結果が、東海の入試日(土曜日)の3日前(水曜日)に出ると、子どもは少なからず動揺します。私がこれまでに出会ってきた受験生の場合、やはり東海に合格した受験生のうちの半数くらいがスカラー合格ではない結果になっています。スカラーでなくても東海・滝に十分合格できること、スカラーを過度に意識しないことが重要です。また、スカラー合格=東海合格ではありません。そもそも東海と名古屋では出題傾向が全く違いますし、配点も異なります。実際、過去にも一名だけ、スカラー合格で東海不合格の生徒がいました。
②については、比較的数は少ないですが、全くないわけではありません。特に、東海を第一志望にしていて、それ以外の中学なら公立に進学するというように振り切った方針で受験勉強をしていると、名古屋のような標準的な問題や、語句の問題をたくさん出題する中学の入試問題には分が悪くなります。それ以外にも、実力的には東海の合格が厳しいが、とにかく出題傾向に合わせて決め打ちをしている場合にも、このようなことが起きる場合があります。そして、名古屋が不合格だと、その先の受験が難しくなります。東海と滝は、偏差値で10も上の中学です。さらに、自分の得点も開示されるので、子どもがどんどん自信を失っていきます。精神的にはまだまだ幼い受験生にとって、この不安を短時日で解消するのはかなり難しく、東海を回避して南山男子を受験するということも視野に入ってきます(南山男子の受験には事前の出願が必要です)。
これらの問題を回避するためには、名古屋中学の対策をしっかりとしておく必要があります。第一志望ではないからといって、過去問にほとんど取り組んでいない、どのような出題があるのかも知らないというような状況は、名古屋が不合格になったときに、とてつもなく重苦しい事態を招きます。できれば12月までに名古屋の過去問を一度は解くべきですし、大人が出題傾向などをしっかりと理解しておくことが大切です。偏差値があったとしても、不測の事態が生ずるのが受験です。まして、東海と名古屋では出題の方向性が真逆です。配点の大きい国語と算数のどちらかで失敗すると、取り返すことが難しくなります。
また、名古屋がスカラーではなかった、不合格になってしまった、というような状況も事前に想定しておくのは、周りの大人の仕事です。スカラーの人数と東海合格の人数に差があることや、出題傾向が全く違うことなどを、普段からお子さんに伝えていることで、子どもの受けるダメージは全く異なります。不合格になったときに、受験校をどうするのか?あるいは、それを見越して東海・南山男子を両方出願しておくのか?など、大人がしておくべき準備はかなり多いのが、名古屋中学の最大の特徴です。