実際の授業でどのようなことをやっているのか。それを少しだけお見せします。
~基本的な方針~
授業の中で行うことは生徒に足りない部分を見つけ、それに対する手当をすることが基本になります。
全ての問題には行うべき手順=作法があります。その作法にしたがってやるべきことを行えば正解にたどり着けます。私の仕事は、生徒が作法を理解できているか、理解できているとすれば、その作法のうちどの部分に問題があるのか。また、その問題を解消するために何が必要かを見極めて行くことです。
たとえば記述が苦手な生徒の場合、記述の作法が分かっているかを確認します。記述問題の場合この作法は大まかに言って、①何を答えるのか把握する②解答の要素(採点基準)がどこに書いてあるか確認する③要素を答案の形式に合わせて記述するという三点に分かれます。これが身についていると判断すれば、次にどこに問題があるかを考えます。多くの生徒の場合問題となるのは②の部分です。とはいえ、どこに要素があるかを教えても生徒は別の問題に対処できません。そこで、どの言葉に着目したのか、どのように考えたのか、生徒の考え方を追っていく必要があります。その上で、どうすれば良かったのかを考えていきます。
もっと具体的に、ここでは2014年の東海中学の大問三、問9を使って説明します。生徒の想定は、何を答えていいか分からなかったという状況です。
問題は「かさねちゃんの言ったことのいみ」を40字以内で説明するものです。作法としては、①かさねちゃんの言おうとしたことを説明する②本文ではかさねちゃんの発言部分を使うということになります。そこで、発言の部分を見つけます。その際に、リュウセイが帰ってくるかどうかは関係がないことが分かるため、該当部分は【笑われるかと思ったけど~一人じゃなかったよ。」】の部分だと分かります。そうすると、この部分のかさねちゃんの発言には、①私は特別な班長じゃないという部分と②問題が生じた時に一人で解決したわけではなく、みんながいてくれたから解決できたのだという部分しかないことが分かります。40字なので、この2つを入れると字数はギリギリです。
生徒のつまずきは、かさねちゃんの発言がどこにあるのかが分からなかったというものかもしれません。国語が苦手な生徒の場合、物語文で会話が続くとどちらが誰の発言か把握できなくなることがあります。その場合に、会話文の間に挟まれる、【真面目な顔で言った】という部分や、【オレは続けて言っちゃった】という部分から誰の発言かを整理する必要があります。あるいは、【「一人じゃないよ~いつも一人じゃなかったよ。」】の部分をそのまま書く生徒もいます。【そのとき】とはいつなのかを説明しないと解答になりません。そのような生徒には、自分の書いた内容だけで言いたいことが伝わっているかを考えさせます。
このようにして生徒の問題点に手当をしていくのですが、その際にネックになるのは、問題の少なさです。国語の勉強法についての部分でも書きましたが、国語の類題はなかなか見つかりません。そこで、私の授業では生徒の問題点がはっきりした後はオリジナルのテキストや入試過去問を使います。記述が苦手な生徒の場合には、記述のみの問題を作成し、それを使って前回解消したはずの課題をもう一度確認します。あるいは、何度も練習して慣れさせます。中学によっては記述問題しか出さない中学や、選択肢と抜き出しが中心になる中学がありますので、それらを時機に応じて使用してまいります。
また、ほとんどの生徒は語彙力に問題があります。これは中学受験生の90%以上が抱えている問題です。文章を読みながら知らなかった言葉を確認していくことはもちろんですが、生徒がつまずいた言葉を別の文章の中で使うことで、語彙力の定着を目指していきます。
~授業の流れ~
生徒の状況に合わせて授業を組み立てます。間違えた問題について、何がどのように分からなかったのか説明できる生徒の場合には、それに対する対応を中心にいたします。ここでは対話によって自分の考え方を整理し、正しい方向へ導くことが中心となります。
国語の問題を解く事自体に不慣れな生徒の場合には、問題集などでとにかく文章を読み、語彙力を増やし、問題に対する考え方を反復していきます。課題が明確になっている生徒の場合には、必要なものを含んだ問題を作成して解いていきます。
ひとつの問題について20分から30分を設定し、自力で解くことを基本にしますが、状況によって横からさまざまな介入をします。明らかに何をするか分かっていない場合には、横からやるべきことを確認していきます。その後、生徒と一緒に反省会をやります。正解している問題であっても何か問題があることがあります。やるべき手順を1つずつ確認し、足りなかった部分がないかを調べていく大切な作業です。その上で、必要となる部分に対してどのような対処をするかを決め、生徒に伝えます。