漢字の学習はどのように進めたら良いか。お悩みのご家庭も多いと思います。塾は毎週漢字テストを行います。漢字テストに向けて勉強しなさい、間違えたものは○回書きなさい。漢字テストの点数が悪いと、どうして覚えたのにできないの!・・・こんな風になっていませんか?
まず、漢字の入試での位置づけを整理してみましょう。
・出題・・・東海6問、南女5問、滝10問
漢字はどこの中学でも出題されます。配点は、東海が10点、南女が30点(200点満点)、滝が20点です。滝の20点は大きすぎるようにも思えますが、どこの塾・出版社の配点を見てもそうなっているので、ここではそれに従います。東海・南女が難しい言葉の出題をするのに対して、滝は比較的簡単な出題をします。
・記述・・・東海300字~400字、南女160字、滝160字
漢字が苦手で困るのは、実は記述の答案だったりします。いわゆる学校配当漢字が書けていない文章は、読み手である採点者に非常に悪い印象を与えます。たとえば・・・
机の上にある花瓶に活けられた花は、美しいだけでなく、季節を感じさせることもできるから。
つくえのうえにある花びんにいけられた花は、うつくしいだけでなく、きせつを感じさせることもできるから。
大人が見ると、下の文章は子供っぽく見えます。国語を専門としている人間からすると、「季節はともかく(!)、上とか美とかも書けないのか!」と真面目に勉強に取り組んでいたのかを疑いたくなります。
学校配当の漢字を正しく書けるということは、記述の答案を作る上でも大切なことなのです。
次に、漢字をどのように学べばよいのかを考えてみます。
漢字が書けない問題は、原因を2つに分けることが大切です。(テーバイの政治家・軍略家であったエパミノンダスは、レウクトラの戦いで強大なスパルタ軍に怖気づく味方兵士に、「恐ろしく見える大蛇もこのように引きちぎってしまえば大したことはない」と言っています。困難な問題は分割すると解決策が見えてきます。理=ことわり、も事を割るから理解できるのです。)
1つ目の問題は、字自体を覚えていないこと。あるいは、うろ覚えで正しく書けないことです。編や旁を間違えてしまうのが典型ですが、トメ・ハネ・ハライを正しく書けていないものも同じです。
もう1つの問題は、言葉の意味を知らないこと。厳冬という言葉は、意味を知っていれば漢字を推測することができます。文字は知っているけれど、その言葉に対応する文字が正しく出てこないというのが、こちらの問題です。
1つ目の問題については、何回か書くということが有効ですが、2つ目の問題についても同じ対処をしても効果がありません。ただ単に、間違えたものを書いて覚えなさい、という指導は有害ですらあります。
この2つ目の問題を解決するためには、言葉の意味を知り、漢字の意味を知ることがどうしても必要です。綿々・綿密に寄せて、という副題を付けたのは、今年(2019年)の東海と滝で出題されたからなのですが、正しい漢字の学習をしていれば正解できたと考えられるからです。
綿とは綿花のことで、綿花は細い糸が細かく絡まり合っています。ですから、中身が詰まっているときに使います。また、綿花は一本の糸を引き出すと、そのままどんどん糸が引き出されてきます。ですから、物事が終わらないこと、連続することの意味としても使います。例えば、連綿がそうです。
綿という漢字を学習するときに、字の形だけを覚えるのはもったいない。漢字の意味を知り、その漢字を使う他の熟語を知ることで、言葉の世界はどんどん広がっていきます。
ご家庭で漢字の学習をするとき、その言葉だけでなく、類義語や、同じ漢字を使う他の熟語を教えてあげてください。それは、お子さんの語彙力を増やすことにも繋がります。以下に、いくつかの例を挙げておきますから、参考になさってください。私も授業でよく使うものばかりです。
布・・・生地の意味で使うだけでなく、広げるという意味で使います。
布教、散布、公布、布告、などです。
検・・・調べるという意味で使います。配当漢字に険があり、よく混同されています。
検査、検定、検証、探検、などです。
ところで、探検は探険とも書きます。なぜでしょうか?是非、漢字の意味から考えてみてください。また、試験や実験は験を使います。こちらの漢字にはどのような意味があるでしょうか。
漢字の学習は短時間で終わらせてはいけません。親子で時間をかけて、一緒に考えてください。