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-詩・短歌俳句・文学史の対策が必須-
韻文の出題、文学史は前年度の出来事に関連するものが多い。
他より深い文法事項、文章題は抜き出し・選択が多いが、合計100字前後の複数の記述問題も。
1.出題傾向
金城学院中学の出題の特徴は、毎年必ず韻文が出ている点にあります。文章題2題に加えて、詩の大問と、短歌俳句の大問、語句の大問があるので、2つの大問しかない他の中学とは全く違う形式になっています。ここでは、それぞれの分野別に傾向をお伝えします。
- 文章題:2題出題されます。
例年の出題を見てみると、まず説明文の文章量が比較的少なく、物語文では長文の素材が使われることが多いことが分かります。また、2013年の説明文は非常に短い素材になっていますが、これは文章自体の難易度で調節しているものと考えられます。文章を読むスピードに難があるお子さんの場合には、あらかじめ解く順番などをシュミレートしておきましょう。
問題については、抜き出しと選択問題が多いという評価が多いですが、むしろ、この難易度の中学としては記述が充実していると言うべきでしょう。例年複数の記述問題が出題されており、どの年度でも記述量の合計は100字前後となります。偏差値で差がある愛知淑徳中学と比較しても記述量では大きな差はありません。また、問題の難易度も決して簡単なわけではありません。偏差値だけを見ていると問題も簡単だと思い込んでしまいますが、決して楽な相手では無いという事を肝に銘じておきましょう。
また、問題の中に慣用句や語句をからめたものが多いのも金城学院中学の特徴と言えます。
- 詩:1題出題されます
韻文はどこの中学受験塾でも軽視されています。金城学院以外で出題されることはまず考えられず(実は愛知淑徳中学で出題されているのですが・・)金城学院中学が女子校であるために、過半を占める男子生徒に配慮するとウェイトを減らさざるを得ないのです。ただし、問題は詩の表面的な理解で十分対応できます。詩を重視する必要はありませんが、最低限、表現技法や詩の形式といった他の人が落とさないところは準備をしておきましょう。
- 短歌俳句:1題出題されます
この分野はさらに塾で扱われる比重が低く、自分である程度カバーしなければなりません。また、この分野の問題の難易度も決して低くはなく、非常に有名な短歌や俳句の解釈についても準備が必要です。たとえば、2012年の出題では正岡子規の「客観写生」を知っていることが求められていますし、2011年の出題では季語「炎天(炎天下ではない)」を抜き出すことを求めています。
- 語句:1~2題出題されます
金城学院中学の語句は、他の中学よりも深い文法事項の理解を求めてきます。他の中学では助詞・助動詞の判別がせいぜいですが、ここでは、品詞の違い(2010年、2013年)や擬態語と擬声語の区別(2012年)、修飾・被修飾の関係(2008年、2009年、2012年)など、バラエティに富んだ出題がされています。また、漢字についても慣用句や外来語を熟語に直させて書かせる問題が出ています。
2.合格者平均点
金城学院中学の合格者平均点は6割後半から7割前半(2010年63.95点、2011年74.4点、2012年66.2点)となっています。科目ごとのバラつきは少なく、他教科が苦手で国語で差をつけるつもりなら、満点を取るつもりで臨みましょう。ただし、配点が国算100点に対し、社理50点であるため、社会・理科に過度の期待をかけるのはやめた方が無難です。
金城学院中学で特筆すべき事としては、他の中学に比べて合格者最高点と合格者最低点の差が大きい(2012年入試では愛知淑徳88点に対して、金城学院116点)事です。 第一志望として考えるのであれば、合格者平均点にとらわれ過ぎないようにしてください。
3.合格に必要な力
金城学院中学は文章題の出題も多様であり、さらに他の中学では必要がほとんどない韻文、文法の準備をする必要があります。そのため、第一志望でなかったとしても早い時期にある程度対策をしておく必要があります。これは保護者の方に例年お伝えすることなのですが、なかなか実感して頂けないようです。おそらく偏差値が低い事から軽く見ているのだと思いますが、出題傾向でも触れたとおり、この偏差値の中学としては難しい部類に属する本文と問題になっています。
また、たとえ南山中学女子部や愛知淑徳中学が第一志望だとしても、試験日程の関係でほぼ必ず金城学院中学を受験することになります。お子さんの初めての「受験」が金城学院中学であり、(準備不足のせいで)初めて受け取る通知が「不合格」である可能性も十分あるのです。そこからメンタルを立てなおして次の受験に挑むのは負担が大きいです。決して「すべり止め」などと考えず、第一志望のつもりで準備をしてください。
金城学院中学の対策としては、普通の文章題についての対策と、特殊な出題についての対策に分けて考えます。
- 普通の文章題
まず、長い物語文をできるだけ早く読めるようにしましょう。金城学院中学の出題は明らかに物語文重視です。物語文が苦手な人はまず登場人物とそこで起きた事件の整理から始めましょう。 また、出題内容として慣用句・語句についての問題がよく出題されていますから、ここを押さえましょう。有名所の慣用句・語句を覚えておけば十分ですが、この部分も普段軽視されがちな所です。
読解問題については、記述問題で様々な制限を味方に付けられるようにしましょう。「○○という言葉を使え」という問題文の指示は決して自分を制約するものではなく、むしろ正解への道標をはっきりと照らしているものです。問題文の指示をうまく使って正解にたどり着く練習をしておきましょう。
- 特殊な出題
韻文については、まず、季語と季節をしっかり押さえましょう。毎年1題出題されています。この場合、全てを覚える必要はなく、紛らわしいもの(七夕:秋など)を覚えれば対応できます。 また、擬態語・擬声語などを補充させる問題も頻出なので、短歌・俳句の中にこれらの言葉が出てきたらチェックしておきましょう。
次に文法ですが、品詞分類まできっちり理解しておく必要があります。順を追って整理をすれば決して難しいものではありません。また、いっそ諦めるのはオススメはできませんが1つのやり方です。
品詞分類は6年生のお子さんに理解させるのが難しく、一方で必ず出題されるというわけでもありません。他の中学も受験することを考えれば、助詞・助動詞の判別を優先すべきではあります。
文学史についてですが、基本的な事項はきっちり覚えておきましょう。また、出題傾向を詳しく調べると、どうやら前年に起こった出来事をベースにしているようです。こちらに私の出題予想(2014年)を掲載しましたので、参考になさってください。なお、当たる保証はどこにもありません。
漢字については、出題数が一定しませんが、5問程度は出題されます。また、対義語に関する出題が多いですから、単に漢字を覚えるのではなく、対義語・類義語と共に覚えるようにするとよいでしょう。
全体的に金城学院中学の出題はよく考えられています。「舐めてかかっている生徒はお断り」という姿勢を感じます。逆に言えば偏差値が足らなくても事前の準備を計画的にすることで本番の大逆転は十分有り得るということです。効率よく、必要な準備を怠らないように心がけて下さい。