国語の勉強法については、常々誤ったやり方が流布していると感じています。
それも、「そう思ってしまってもしょうがないか」というものではなくて、「それはちょっと気付こうよ」というものが多いです。ここでは、その様な誤解を根拠を含めてお話していきます。
1.重要だと思った所に線を引け
結構誤解している人が多くて、かつ、教える側の怠慢・悪意さえ感じるのがこの指導です。理由は単純で、国語が苦手な生徒は、そもそも重要部分がわからないから苦手なわけです。その生徒をつかまえて、「重要部分に線を引きながら本文を読みなさい」といってみてもいたずらに混乱させるだけです。時折見かける国語が苦手な生徒(真面目な生徒に特に多いです)に、本文の殆どの部分に線を引いている生徒がいます。これなどはこの悪しき指導の代表的な犠牲者です。
この指導の背景には、「とりあえず本文に線が引いてあれば保護者も勉強していると納得する」という教える側の理屈がかいま見えます。そもそも、我々指導する側であっても本文だけを読んで重要な部分を見分けるのは困難です。もちろん、線を引くことが無いわけではありません。ただ、それは「本文を読む時に重要部分を把握するため」ではなく、「問題を解く時に自分の頭のなかを整理するため」です。
2.本を読め
本を読めば国語が得意になるというわけではありません。もちろん、文章が読めない(文盲)レベルではどうにもなりませんが、一定程度文章を読むことに慣れていればそれ以上は不要です。このやり方の厄介なところは、入り口としては合っているという点にあります。小学校3年生、あるいは4年生で、それまでに本を読んだ経験が殆ど無い生徒の場合には、このやり方が有効であることは間違いないです。ただ、生徒の状態を十分に把握せず、「国語が苦手なら本を読め」というのは暴論です。実際、私が学生だった時にも、「いつも本を読んでいるけど国語(現代文)の成績は大したことがない」同級生が周りにいました。本を読みさえすれば国語の成績が上がる(比例関係にある)というのは誤りです。
さらに、実際の入試問題を見てみると難関校の文章を完全に理解できる生徒はほとんどいません。開成やラ・サール、灘、桜蔭といった超難関校の本文は大人でも理解することが大変な難易度の文章です。これらの中学で出題される文章は岩波新書(ジュニアではない)のレベルです。部分的に理解できた所を最大限使って問題に取り組むやり方でなければ到底太刀打ちできません。東海地方でこの様な素材文が出題されるのは愛知淑徳中学です。
3.まず問題文を先に読め(その後傍線の前後を読め)
この指導をする講師が身近にいれば、その人は間違いなく素人です。少なくとも中学受験に関しては完全な素人です。南女、東海、滝、淑徳といった上位校の出題を見てみると、本文全体の内容を把握していないと正解できない問題を出題しています。典型的には、南女が出題する事が多い抜き出しの問題で、傍線部とは全く違う部分の箇所を見つけなければならないものがあります。また、内容正誤の選択問題も、その選択肢の内容が本文のどの辺りに書いてあったかを見ていないと正解できません。これは、上で述べた「本文の内容を完全に理解できる生徒がいない」ことと矛盾するようですが、そうではありません。本文の完全な理解が出来なくても、どの辺りにどういうことが書いてあったかは分かります。大まかな流れでいいので本文の話題が掴めていないとこれらの問題に対処できないということです。
4.本文を三回読んでから問題を解け
・・・・時間切れですよ。そんなやり方。
入試過去問を一度見てみてください。試験時間50分で文章題が2題出題されている中学がほとんどです。問題は各10問前後で、記述が含まれています。本文を読むのにかかる時間は、早い生徒で3分。遅い生徒(=たいてい国語の苦手な生徒)の場合には5分以上かかります。この時点で合計6~10分以上。さらに、見直しの時間が必要なので、これを加えて10分~15分。そうすると、残り時間が35分~40分しかありません。
記述問題は簡単であっても5分前後はかかるので、これが2題あるとして10分。25分~30分で20問(抜き出し、記号選択)を解くとなると、1問あたりの時間は1分~2分。このような計算をすることができます。さて、ここからさらに本文を@2回読む時間6~10分を引いて計算してみます。そうすると、19分~20分しかありません。1問1分で解くのはまずムリだと誰にでも分かるでしょう。
5.分からない言葉が出てきたら辞書を引きなさい
ご自分の学生時代を思い出してください。国語の問題を解きながら辞書を使った人なんて皆無だと思います。理由は簡単。面倒だからですよね。子供も同じです。本文を読みながら知らない言葉が出てきた時に辞書を引いて逐一調べられる生徒がいたとしたら、その生徒は既に国語が得意になっているはずです。もちろん、自分で辞書を引きながら学習できれば、それに越したことはありません。しかし、それはほんとうにごく限られた子供だけです。現実を見据えれば、辞書を引けとは言えないはずです。むしろ、周囲の大人がその言葉を教えてあげるべきでしょう。言葉を使えるようになる手助けとしては辞書<<<人間です。人間であれば間違えることもありますが、単に言葉の意味だけではなく、その使い方や類義語、対義語を一緒に教えることが出来ます。そのプロセスこそが子供の語彙力を高めるのです。